私のボディーガード君
「あなたに心配されたくないわ」

ハッキリ口にすると、浅羽が傷ついたように眉尻を下げて、「ごめん」と言った。弱々しい表情を浮かべる浅羽に何だか私が悪い気がする。

「確かに僕は妃奈子さんを心配する資格ないね。ごめん。酷い別れ方をしたから、謝りたかったんだ。クリスマスイブは申し訳なかった」

深く頭を下げた浅羽にびっくりした。
周囲の視線が痛い。待合室には10人ぐらいの患者がいる。

ここでそんな話、やめて欲しい。

助け船を出すように受付で名前を呼ばれた。タイミングよくお会計になって、支払いを済ませて、逃げるようにクリニックを出ようとしたら、「妃奈子さん」と浅羽に声をかけられた。

「ちょっと話せないかな」
すがるような目で見つめられる。

「ほんのちょっとでいいから」
じっと見つめられ、危うく頷きそうになった。

「私は話す事ないから」
浅羽に背を向けて自動ドアを通った。

外に出ると若林さんが待機していた。慌てた様子の私に「大丈夫ですか?」と心配するように声をかけてくれたけど、「何でもない」と答えるのが精いっぱいだった。

浅羽と言葉を少し交わしただけなのに、心がぐらぐらと揺れている。もうあんな人、好きでもなんでもないのに。

今日はストレスが溜まる事ばかりだ。
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