幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました
 確かにあのとき、沙也のマンションに押しかけてきたとき、そう言った。

 そのことで沙也の嫌な予感と、胸の中の嫌な感覚は加速した。

「ま、真悠さん、まさか」

 言おうとしたけれど、そんなこと、軽々しく口に出せない。

 よってためらってしまった数秒の間で、また先に言われてしまう。

『ええ。終わりにしようと思うの。沙也さんにももう会うことはないでしょうから、一応、最後に連絡をね』

 もう真悠はすべて心を決めたという口調だった。

 いっそすがすがしいほどに、淡々と話していく。

 焦るのは沙也だった。

「ちょ、ちょっと待ってください! そんなこと!」

 あたふたと言ったのに、真悠はそれに応えてくれなかった。

『ああ、風が気持ちいい。ちょっとしょっぱいような気もするけど、それもまた良しね』

 それはどこかを移動していて、そしてどこかへ着くか、通りかかるかして、零れた独り言のような言葉だった。

 よくわからないことに、心地よさそうな響きすらある。
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