捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
「一週間後、俺達はまたこっちに来るけど、イオレッタも一緒にどうだ?」
「そうですね。精霊神様にご挨拶できたら、嬉しいです」
 クライヴが誘ってくれるのは嬉しい。
 だけど、胸が痛みを訴えかけてくるのはなぜだろう。その理由を考えたくなくて、痛みから目をそらした。
 
 * * *

 ベルライン家では、次世代の領主夫妻が畑に出ていた。
「頼むぞ、ボーレン」
 トラヴィスが命じたのは、彼を契約している土の精霊だ。土の精霊は、精霊使いの魔力を対価として、土を豊かに育て、さらに植物の生成を速めてくれる。
『嫌だ』
 けれど、今までは命令に従っていたボーレンは、トラヴィスの命令を拒んだ。精霊が、契約している相手の命令を聞かないなんてありえない。
「な、なにを言ってるんだ? 土を育てるんだ、ボーレン」
『断る』
 もう一度命令してみたけれど、帰ってきたのは明確な拒否。いったい、何があったというのだろう。
『いない、いない……魔力くれる人、いない……』
「いるだろ、ここに。ほら、俺の魔力を――」
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