捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
「これは、クライヴさんと私の分ですからね! こっちには手を出しちゃだめですよ」
 別皿を自分とクライブの間に置く。
「悪いな」
「いえ、一人占めするセルヴィハさんが悪いんです」
 なんて会話も、セルヴィハの耳には入っていないらしい。
「や、うまいぞ。セルヴィハが抱え込みたくなるのもわかる――いや、俺はやらんが」
 冗談交じりにじっとりとした目で見てやったら、クライヴは慌てて手を横に振る。クライヴの口にも合ったのならよかった。
 結局、イオレッタが午前中に焼いたクッキーはほぼすべてセルヴィハの胃におさまってしまった。
 近所におすそ分けしても、しばらくもつであろう量は焼いたのに。
「セルヴィハさん、食べ過ぎです。もうありませんよ?」
「もうない? しかし、だな――まだ足りない」
 ドラゴンの胃袋、鉄壁過ぎではないだろうか。セルヴィハは空っぽになった大皿を見て、うなだれている。
「お店に行けば買えますよ。私と、違う味のものが」
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