捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
 駆けつけてきたのは、どうやらエグバートの従者らしい。走り回ってエグバートを捜していたようで、息が乱れている。
「悪いな、兄上を連れ帰ってくれ」
「かしこまりました」
 わらわらと集まってきた従者達が、何事かまだわめいているエグバートを担いで去っていく。
 再び、この光景を見ていた人々の心の声は一致した。
 この男が未来の国王で、この国大丈夫なのか? と。
「イオレッタ、迷惑をかけたな。剣を向けられるとは思ってなかっただろうに」
「いえ、それはいいんですけど……」
 ちらり、と視線を落とす。
 クライヴがこの国の王族だったなんて、想像もしていなかった。
 イオレッタと彼との間に、高い壁が一気に築かれてしまったような気がする。たしかに、貴族だろうとは思っていたけれど、まさか王子様だとは思ってもいなかった。
(別に、たいした問題じゃないし)
 クライヴにかすかに想いを寄せていたのは否定しないけれど、まだ、恋心じゃない。だから、大丈夫。彼との関係が変わるわけじゃない。そう自分に言い聞かせる。
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