捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
 まるで化け物でも見たような目で、トラヴィスはシャロンを見た。
(地下室? 監禁?)
 もともとトラヴィスは、肝が据わっているというわけでもない。
 イオレッタからシャロンに乗り換えたのだって、シャロンから熱烈に口説かれたからだった。
 いつも地味な服装をしていたイオレッタ。婚約者が会いに来たというのに、化粧一つしていなかった。彼に対する愛情を見せたこともなかった。
 それと比べてシャロンは、いつもトラヴィスが訪れると嬉しそうに微笑んだ。上品でありながらも甘い香水の香り。真正面から寄せられる好意。
 シャロンの気持ちを無下にはできなかったけれど、イオレッタが自分の婚約者であるということくらいちゃんと認識していた。
 ベルライン家に入り当主となるためには、イオレッタの夫にならなければいけないのだと。
 だからこそ、シャロンへの恋心は完全に封印し、よき「義兄」として、いつか訪れるであろうシャロンの結婚の時には義兄の顔を崩さないまま送り出すつもりだった。
< 268 / 320 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop