捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
「他の女にくれてやるのはしゃくだけど、相手が生きている間は見守るって決めてるの。死者の世界に来たら堂々とアタックするわ」
 それはそれでとっても前向きなのだが、何か違う。どこかどうとは言えないのだけれど、何か違う。
「とまあ、私も障害のある恋をしているわけだけれど、あなたの場合はそこまででもないでしょ」
「王族貴族って別の意味でややこしいわよ……?」
 元貴族令嬢だったイオレッタにはわかる。王族貴族の間にある強い選民意識が。
 クライヴは気にしないかもしれないけれど、今のイオレッタがクライヴの気持ちを告げたなら、絶対に彼に迷惑をかけることになる。
 ゼルマの障害に比べたら小さなものかもしれないけれど、乗り越えるのはきっと苦労する。
「生きている人間はやっかいだと思ったけれど、王族や貴族っていうのも厄介なのね」
 生きている間は庶民だったゼルマには、このあたりのことは少々難しいらしい。
「――ま、後悔はしないようにしなさいよ。死んでから後悔したって、遅いんだから」
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