捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
 頬が熱い。触れられている腰が気になって、背中に余計な力が入る。
『そんなに固まっていたら、着く頃には疲れ果てているんじゃないの?』
 くすくす、と耳元でヴァネッサが笑う。イオレッタだって、好きで固まっているわけじゃないのに。
「どっちに向かってる?」
「スィア湖の方に移動している」
 クライヴの問いに、ちらっとセルヴィハは視線をこちらに向けた。彼の目は、すぐに前方に戻される。
「あの、まさか、精霊神様に悪さをしようってんじゃないですよね……?」
 精霊寄せの香を使っている者が、精霊達を集めて何をするつもりなのかは知らない。けれど、精霊神は、神の中でも精霊に近い性質を持つ。
 ましてや、スィア湖の精霊神は、精霊から神へと変化したばかり。精霊の気質を大いに残していてもおかしくないような気がする。
「む、吾輩もそれは考えていなかったな」
「セルヴィハ、急げるか?」
「任せろ。お前達、口は閉じていろよ。舌を噛んでも責任は取れぬ!」
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