捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
 ベルライン伯爵家の馬車の周囲は、精霊達にぎっしりと囲まれている。どの精霊も、まるで意思を失ってしまったみたいだ。
「スィア湖まで行かないと契約できないのです、殿下」
「そんなことはないだろう」
 ここでようやく気付いた。
 無理やりここまで集めてきた精霊達。たぶん伯爵が持っているのは、普通の精霊寄せの香ではない。精霊の意識を乱すようなそんな代物。
「イオレッタ、どうした?」
「精霊神様が、怒ってます! あれは精霊寄せの香じゃないみたい……!」
 精霊神が、精霊寄せの香に惹かれ、無理やり言うことを聞かされている精霊達を見て、怒りを覚えたようだった。
 スィア湖の湖面が激しく揺れ、水が空高く舞い上げられる。まるで、雨のように降りそそぐ中、イオレッタは精霊神に向かって叫んだ。
「お願い、精霊神様! ちゃんと返すから。皆、返すから!」
 気がついた時には、あたりはしんと静まり返っていた。まるで、何も起きなかったかのように思えてくる。
「伯爵! その香を消せ!」
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