捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
 叫ぶものの、イオレッタの声はまったく届いていないようだ。
 ベルライン伯爵が使った香は、精霊神の心を惑わせているようだ。こちらの声に耳を傾けるどころか、風はますます激しく吹き荒れるだけ。
 一歩、二歩、よろめいた。
『負けるんじゃないわよ!』
 イオレッタの肩の上で立ち上がったヴァネッサは、前足でイオレッタの頬を叩いた。
「負けるなって、そんなことを言われても!」
『イオレッタならできるさ』
 アルディも反対側の肩の上まで上ってくる。顎に触れるちくちくとした感触。
「アルディも無茶言わないで!」
『デキル、ヤルシカナイ!』
「やるしかないのはわかっているけど!」
 フェオンの声は、力強い。ふわりと羽ばたいて、イオレッタの髪にとまる。
『ヤル? ヤラナイ?』
 ソムがイオレッタの首に巻き付いて、ちろりと舌を伸ばす。
「ソムは生まれたばかりなのに」
 生家で暮していた頃も、家を離れてからも、イオレッタは一人だった。ずっとイオレッタの側にいてくれたのは、精霊達だけ。
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