捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
 実家にいた頃も冒険者としての活動はしていたけれど、イオレッタはずっと一人で活動していた。変装はしていても、伯爵家令嬢のイオレッタと冒険者のイオレッタが同一人物だと気づかれる可能性もあったから。
 母がつけてくれた名を捨てるのは気が引けたから、同じ名前で活動していた。正体をばらさないよう振る舞えば、必然的に他の冒険者とのかかわりは薄くなる。
 自分が思っていたよりも、はるかに人とのかかわり合いに飢えていたみたいだ。ゴルフィアのアリスとは時々お喋りをする仲になったけれど、イオレッタの方からもう一歩踏み出していたら、休みを合わせて食事をする関係ぐらいにはなれたかもしれない。
「なんて、今さらよね」
 精霊使いではなく精霊師であることに気づかれたくなかったら、今まで通り、一人で活動していくしかないのだ。
 でも――と不意に思う。
(もう、国境を越えたんだし、いいんじゃない?)
 精霊使いとしてだけではなく、精霊師としての力を見せてしまってもいいのではないだろうか。
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