推しは策士の御曹司【クールな外科医と間違い結婚~私、身代わりなんですが!】スピンオフ

 季節メニューにあった、野菜たっぷり黒酢あんかけ御膳をふたりで注文して、私と芽愛ちゃんは向き合って座る。平日でも店内は人が多く明るい雰囲気なので、あのまま、まっすぐ帰っても、部屋でひとり暗くどんよりしてたから、芽愛ちゃんに誘ってもらって正解だったかもしれない。
「無理やり誘ってくれて、ありがとう」
 素直にそう言って頭を下げると「無理やりは余計ですぅ」と、口をとがらせてから笑顔を見せたので、そこから私たちはいつもの雰囲気に戻り、世間話などをして食事を楽しみ、ドリンクバーでコーヒーを取りに行って座ったとたんに、芽愛ちゃんが私に「全て話しなさい」と、急に変な質問を始めた。いきなり何を聞く?目を丸くして芽愛ちゃんを見つめると、芽愛ちゃんはコーヒーカップを脇に寄せ、しっかり聞く気満々で私を見つめていた。

「全てって何?」
「全てでしょう」
「だから何?」
「ここ最近の悩んでいることとか、今日の帰りの顔色が悪かった話とか、琉希とどうなっているのかとか、全部」
 鋭い。いや、そのくらい普段と様子が違っていたのか私。
「急に綺麗になった気もするよ。本当にここ数週間で顔色も良かったり悪かったり、病気とかなら病院行けばいいけど、話して治るタイプの方なら、相談にのるから話して欲しい」
 真剣な顔で芽愛ちゃんに言われて、私はうつむいてしまった。
 相談しても笑い話にしかならない話だ。異次元の恋愛話。現実を見つめることのできない、女の子の話。どうにもできない恋心の話。
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