推しは策士の御曹司【クールな外科医と間違い結婚~私、身代わりなんですが!】スピンオフ
「狭いけど座って下さい」
 とりあえず座らせておいて、何か飲み物でもと思ったら……いないっ!この狭い部屋でどこに消えた?二度見して専務を探すと私のベッドの上でしっかり身体を横たえていた。自由すぎます。
「専務」
「ごめんなさい。疲れました」
 コートの下に着ていたカジュアルな紺のジャケットを脱ぎ捨てると、シンプルな白いシャツとベージュのパンツ。いつものスーツとは違う姿も似合ってます。
 しっかりと自分の家のようにくつろぎ、身体を伸ばすけど我が家のシングルベッドから長い足が出そうな勢い。
「タクシー呼びます」
 こんな狭いベッドなら休めない。
「なぜ?」
 閉じていた目を気だるそうに開け、そのまま私を見つめる。色気ただ漏れです。
「ここでは休めません」
「どうして?」
「どうして……って」海外生活が長いと日本語通じませんか?
「どこの場所でも咲月さんが居ないと意味がない」
 近寄る私の腕を引っ張り、私の身体を自分の胸に入れる。
 推しとベッドの上でツーショット。頭が回らない。一生分の運を今夜で使い果たしました。
「咲月さん可愛い」
 声が甘すぎます。溶けます。トースターの中のチーズになった気分です。
「可愛くないです私」
「食べてしまいたい」
「食べないで下さい」どんな会話ですか?これは。
「だって可愛い」
「いつも思うのですが、専務は『だって』の使い方がおかしいで……」
 常日頃から思っていたことを言おうとして、顔を上げると専務の長いまつ毛が目の前にあって、唇が重なっていた。
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