推しは策士の御曹司【クールな外科医と間違い結婚~私、身代わりなんですが!】スピンオフ
「専務もそのうち降りてくると思う。とても大切な友達って言っていたから、ほら、新年会で今年の残念賞覚えてる?日本酒のあったでしょう?あそこの会社に勤めている……あっ!いらっしゃった。ごめんまたね」
 新年会のビンゴの景品。たしか芽愛ちゃんが前に言っていた。専務の彼女の会社って、もしかしたら……。
 なぜか急にギューッと心臓が痛くなってしまう。
「慌ただしいヤツ」
 隣でのろけ気味に先輩が言ったけど、私は営業笑顔で出迎える先輩の奥様から目が離せない。
 
 出迎えたのはスラっとした清潔感のある女性だった。
 ベージュのチノ風ワイドパンツに、白トップスを合わせて軽やかスタイル。さらに黒のノーカラージャケットをはおっていた。肩の下まである髪はふんわりとして艶があり、軽やかさの中に女性らしさがあった。表情はやわらかく綺麗な顔をしている。観察眼が高いと言われている私だけれど、彼女は男女問わず好感度が高いタイプだと思う。魅力的な人だった。
 そして、その隣に背の高い男性がいた。
 こちらも目を惹くぐらい、遠くから見てもイケメンだった。黒のテーラードジャケットに白シャツ、カーキーなスリムパンツが足の長さを目立たせている。長めのくしゃっとした髪が柔らかそうで眼鏡が似合っていた。
 たしか……玲菜さん。
『明るくて優しくて、キリっとしていて、思いやりがある人でした』寂しそうな顔で専務はそう言っていた。大逆転できなかった失恋話を車の中で話してくれた。
 もし、彼女の名前が玲菜さんなら……目の前の女性は専務が失恋した相手である。私は彼女が玲菜さんであって欲しいような欲しくないような、複雑な気持ちでジッと見てしまい。私の心臓はまだ痛んでいる。

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