絶対にずっと好きだと証明しましょう

社会人に

新しい環境での不慣れな生活がそう感じさせるのか、社会人になると時間が加速する。
会社の組織に入り人に慣れ、仕事になんとか慣れた頃にはあっという間に2年が過ぎて、会社員3年目の春を迎えた。

楓はバイト時代に働いていたユーゴのいるマーケティング部から営業企画部に移った。
最初のうちこそ定時で帰れていたがしだいに仕事量が増え、残業する日も増えていった。

樹は家を出て一人暮らしを始めている。
お互いに忙しくなった。
会うのはたいてい週末で、一緒にどこかにでかけた後、樹の部屋に行くのが決まりのパターンになっている。
1LDKの樹の部屋はものが少なくさっぱりしている分、樹のもの以外のものがあると余計目につく。
それが歯ブラシだったり髪留めだったり小さな刺繡が入ったタオルのハンカチだったり。学生時代とは違いこの頃には気になったことはちゃんと訊ねることもできるようになり、誰か泊ったのかと聞けば会社の人であり、髪留めも刺繍のハンカチも会社の人たちが家に押しかけてきたときに忘れていったのだというので、フーン……と毛玉程度の引っ掛かりを覚えながらも楓はそれで納得することにした。
勘ぐっても疑っても仕方ないことだ。
たまにサプライズで約束なしに部屋を訪れてみようかと思うこともあったけど、ユーゴのバレンタインサプライズ事件を思い出すと怖くてできない。
動かぬ証拠を見てしまったらさすがの楓もフーンでは済ませられない。
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