愛を奏でるワルツ~ピアニストは運命の相手を手放さない~
「迎えに行く、だっけ?」
ニヤニヤと亜由美ちゃんが言うので、相手が特定された後だと余計に恥ずかしい。
「そんなの無理だってさっきも話したでしょ」
アイスティーを飲みながら、私は答える。
「だよね。
こっちはこうやって見つけることが出来たけど、向こうからすれば名前の手がかりでどうこう出来ないよね。
有名人とか何かしている人ならネットで検索する方法もあるだろうけれど」
「私はごくごく一般人ですからね。
第一、私が日本のどこにいるのかすら知らないだろうし」
「彼に東京に住んでいるって言ったんでしょ?」
「話の流れでね。
でも就職活動のことも話したから、必ず東京にいるとは限らないでしょ?」
確かに、と亜由美ちゃんは唸った。
そしてでもさ、と続ける。
「もしもそれで見つけてくれたら運命だよね?」
ふふっと意味ありげな視線を向けられ、私はため息をついた。
「無理だって」
「だから自分から会いに行くの?」
「彼のピアノはまた聞きたいよ。
チケットが取れたらだけど」
「出待ちしたりとかはしないの?」
「それは、しないよ」
歯切れ悪く答えてしまった。
少しでも顔を近くで見たい。
もしもコンサートが聴けなかったなら余計に思うだろう。
だけど、芸能人のように扱われることをレンは酷く嫌っていた。
それを私がしてしまったら、きっと彼を失望させてしまう。
彼の思い出は、良く笑っている、楽しそうにしていたレンの表情。
数ヶ月ぶりに向けられた視線が冷たいモノになるくらいなら、遠くから見ている方が良い。
「とりあえず、チケット取れると良いね」
「頑張るよ」
亜由美ちゃんが心配そうに励ますのを申し訳なく思いながら、それを打ち消すように笑顔で答えた。