君にかける魔法
この時間の学校にいることなんて、帰宅部組の私にはまず無い。

オレンジ色に染まった桜、校庭、少し遠くに海。
非現実感のある風景だった。
いつも通る道も、いつも使う駅も、
全てがこの美しさの演者だった。


「…美園さんっ」

「何ですか?」

星川さんがあらたまった様子で私の方を向く。
そして頭を下げる。


「私にも……魔法をかけてくれませんか?」



……

………


はい?



イツカラワタシマホウツカイニナッタノー!!!!????


「ごめんなさい。昨日見ちゃって…」

「…っ!」

あ、あれか…


あの物音、星川さんだったんだ。

「こんなこと急に言っても迷惑だとは思うんだけど…」


星川さんは悩みをうちあけてくれた。
結論からいうと、彼氏とのマンネリ化を終わらせたい。
星川さんの彼氏はバスケ部のエース・熊沢君。
1年生の時からエースで、実は星川さんとは中学2年生から付き合っていたと…
お互い部活も忙しく、たまにあっても疲れているからか家で睡眠。

「私メイクとかファッションとか興味はあるけど全然出来ないし、やっぱそういうのって嫌になっちゃうのかなとか、飽きられちゃったのかなとか、色々考えてたら…」
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