忘れえぬあなた ~逃げ出しママに恋の包囲網~
昨日8月1日は、息子凛人の誕生日だった。

「いただきます」
「はい、どうぞ召し上がれ」

4歳になり自分の言葉で気持ちを伝えてくれるようになった凛人。
おかげで意思の疎通もできるようになり、育児もずいぶん楽になった。
もちろんその分わがままが出て言うことを聞いてくれないことも増えたけれど、何を求めているのかもわからず泣き続けられるよりはずっといい。

「おやすみに、ばあばいく?」
「そうね、今度のお休みに行きましょうね」
「はーい」

私の母のことを『ばあば』と呼んでいる凛人は母や私の実家が大好きで、ことあるごとに『ばばいく?』と聞いてくる。
それに、

「とーちゃんもいる?」

もう1人、凛人が大好きな人が弟の徹。
まだ『徹』と言えない凛人は、『とーちゃん』と呼んで懐いている。

「徹もお仕事がなかったらいると思うわよ。あとで電話して聞いてみるわね」
「はーい」

右手を挙げて満面の笑顔で返事をする凛人を見ていると、よくここまで大きくなってくれたと感慨深いものがある。
妊娠、出産、育児、本当に嵐のような約5年だった。
もちろんそれは私1人の力ではなくて、母や、徹や、保育園の先生と職場の人たちに支えられて今日までやって来れた。

「ごちそうさまでした」
「はい、お粗末さまでした」

昨日の晩、2人でお祝いしたバースデイケーキの残りを綺麗に平らげて凛人も満足そうだ。
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