悪役令嬢リセルの恋
 壁のようになっている騎士たちの体をよけ、ひょこっと顔を出すと、青狼の制服を着た壮齢の男性がいた。黒髪に白髪が混じっているものの、唇のあたりに傷跡があり、歴戦をくぐってきた雄々しさがある。
 その背後に、フードを被った背の高い男性が立っていた。
 ──あの人は誰?
 フードのせいで髪の色は見えないが、青い瞳で気品がありながらも精悍な顔立ちをしているのがわかる。気品ある雰囲気から団長の知り合いの貴族令息と思えた。
 貴族令息ならば、どこかのパーティ会場で会ったことがあるかもしれない。
 ──騎士団……それとも市場の見学? でも、どうして人目を忍んでいるのかしら。
 もしかしたら特別な事情があって、団長と一緒にいるのかもしれない。
 それならば、ここで目立つ行動はしたくないだろう。団長のそばでじっとしているに違いない。
 リセルがフードの男性に気を取られている間、事の経緯を話したアクセルたちが団長に叱られていた。

「ご令嬢のおっしゃる通りだ。青狼ともあろう者が何をしている! すぐさま被害状況を確認し、収拾に当たれ!」

 団長の喝を受け、団員たちは散らばっていった。鶴の一声とはこのことか。

「ご令嬢、うちの団員が怖い思いをさせましたね。申し訳ございません」

 団長は深々と謝罪し、敬意を表してくれる。リセルは彼らに毒舌を放ったというのに、不快さを表さないとは噂通りの人格者ぶりだ。
< 11 / 57 >

この作品をシェア

pagetop