悪役令嬢リセルの恋
 クロードは軽々と老婆を背負い、リセルは彼女の荷物を持った。
 診療所で無事に手当てを済ませ、家まで歩く道すがらリセるは老婆に薬屋の場所を尋ねる。あかぎれ用の軟膏が必要な理由を聞かれ、素直に答えると老婆は大げさに「ご令嬢は優しいねぇ」と褒めてくれた。
 家にたどり着くと何度も感謝の言葉を述べられ、お茶飲むように勧められたけれど、丁重に断った。

「ありがとうございます。おかげで助かりました」

 クロードにお礼を言うと、彼はリセルをじっと見つめている。

「……あなたは不思議な人だ」
「え? どういうことですか?」
「青狼たちに意見するのも驚いたのですが、貴族のあなたと、あの平民の老婦人とは関りがないでしょう。なぜ助けたのですか」

 そんなことを尋ねるとは、クロードもアクセルの思考とあまり変わらないのだろう。リセルは少しがっかりしていた。
 ──躊躇なく、おばあちゃんを背負ってくれたのに。心中では見下してたのかな。

「困っている弱者を助ける。貴族として当然のことをしたまでです」
「ふむ。当然のこと、ですか?」

 考え込むようなそぶりを見せる。本気でわからないらしい。

「私たち貴族は平民の力があってこそ生きていられるのです。彼らに背を背けられたら、誰が私たちの衣食住を支えてくれるのでしょう。あっという間に生活が立ち行かなくなりますわ。だから彼らを大切にしたいと思うのです」
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