悪役令嬢にならないか?
◆◆◆◆ ◆◆◆◆

 ウォルグはふと視線を感じ、顔をあげた。
「どうか、したのか?」
 彼の言葉で、象牙色の髪がふわりと揺れる。
「いいえ……。ただ、わたくしたちの子が王太子の婚約者(ヒロイン)だなんて。とても不思議な感じがしましたの」
 彼女の視線の先には、今年で十六歳になった愛娘がいる。
 母親と同じ象牙色の髪に、父親と同じ光に当たると金色に見えるような瞳。
「てっきり諜報員(悪役令嬢)のほうだと思っていたのに……」
 悪役令嬢であったとしても、王族に見初められたのであれば逃げられない。外堀を埋め、じわじわと標的へと近づき、何がなんでも手に入れる。その結果が目の前の彼女なのだ。
 だが、彼女は知らない。そうやって、自分が狙われていたことなど。もちろん、ウォルグは伝える気もない。
「まぁ。昔から兄妹のように育った仲だからな。国王夫妻のような、そんな関係になれると思うよ」
 ウォルグの話を聞いた彼女は、幸せそうに微笑んだ。

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