あの日ふたりは夢を描いた
「今日はまだ時間に余裕があるから」

「……そっか、座ったら?」

私がいるのは四人がけの机で、横も前も空いていた。素直に私の向かい側に腰を下ろす彼。


「宿題やりに来たんじゃないの?」

机に置かれたまだ開いてもいない教科書とノートを見ながら彼が質問している。

「そのつもりだったんだけど、ここは誘惑が多すぎるね……」

私は分厚いミステリー小説のページをめくりながら答える。

そうしているうちにまた物語の中に入り込み、文字を追うことに夢中になっていた。

ふと静かになった空間に気づき顔を上げると、頬杖をついてにこにこしながらこっちを見ている彼がいた。
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