闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
 蘭子を連れてきた自分に非があることを今も責めているかもしれない。
 小手毬の沈んだ表情を見て、楢篠はうーん、と困った声をあげる。
 
 
「それじゃあ、陸奥先生だけが知っているのかな」
「え」
「亜桜さんの病状が変質していること」


 既に脳神経外科の領域を外れている小手毬はげんざいペインクリニックと称した麻酔科医の陸奥を筆頭に、記憶に関する意識障害を担当する精神科医やリハビリテーション担当の整形外科医たちとともに回復期の治療にあたっている。記憶が戻ってきているということで、今後の治療方法が変わっていく可能性を示唆され、小手毬はああ、と安堵の息をつく。
 
 
 ――そう、だよね。ナラシノは患者としてあたしに接してるだけ。ジュウおにいちゃんとあたしの関係を知っているわけがない。

「いまは、ミチノクだけ」
「そっか。だけど諸見里先生にも早めに伝えた方がいいと思いますよ。研修医も二年目からコースが細分化するから」
「ん……そうします」


 年が明け、春になれば自由も二年目として、更に深い研修を受けることになる。
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