闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
 本来なら、父親のクリニックを引き継ぐため内科系ローテートを選ぶはずだった自由が、過酷な外科系ローテートに身を置いたのは小手毬のため。
 けれど、二年目に入れば選べる領域も増え、外科系の研修を受けていた自由でも希望すれば内科系の研修を受けることが可能になる。引き続き自由が外科系を希望するとなると、小手毬との接点は整形外科しかなくなってしまうと楢篠は言いたいのだろう。その頃にはリハビリも終えて退院している可能性もあるが。
 
 小手毬はロールパンをちぎりながら楢篠の表情を観察する。
 彼は桜庭財閥や亜桜家のことなど何も知らない。ただ、ワケアリなひとりの患者を心配しているお節介な看護師だ。
 
 
「天も心配していたよ。もし陸奥先生や諸見里先生、オレにも言えないことがあったら、女同士お茶会でもしたいって」
「アカネが……?」
 小さい頃に何度か顔を合わせただけの彼女が、なぜ自分に親身になろうとしてくれるのだろう。
 不可解な顔をしている小手毬に、楢篠は笑う。
 
 
「まぁ、あいつはあいつで忙しいから……そう真に受け取らなくても大丈夫ですよ」
「あ、はい」

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