闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
 赤根、ではなかった楢篠天はいま、この病院の産婦人科で働いている。
 毎日ちいさな命と向き合う大変な仕事。小手毬とお茶会する暇なんかあるのだろうか。
 デザートのヨーグルトをスプーンでかき混ぜながら、彼女の夫である楢篠の話に耳を傾ける。
 
 
「そういえばオソザキさん、こちらにはさいきん来てます?」
「いえ……たぶん、仕事が忙しいんだと思います。それに、こっちもバタバタしていたので……」


 ブルーベリージャムが混ざったヨーグルトをぺろりと舐めながら、小手毬は応える。
 なぜここで優璃の話が出てくるのだろう。先週ポインセチアの鉢植えと真っ赤なバラの花が届いて以来、彼女からは何の音沙汰もない。
 他人行儀に応える小手毬を見て、楢篠は寂しそうに呟く。
 
 
「早咲先生も?」
「ミチノクは手術で何度か一緒になってるみたいだけど……あたしは先週ポインセチアの鉢植えを持ってきてもらったっきり、会ってないです」
「そっか」
「……ふたりが何か?」
「いや……オレが言っていいものか」
「なんですかそれ。気になるんですけど」
「怒らない?」
「怒るようなことですか?」
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