闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
   * * *
   
   
 小手毬が自傷行為をして病室を移ったと聞いた自由は、はぁと大仰に溜め息をつき、苦笑する。
 
「淋しがりやのお姫様に戻っちゃったか……」
「なんですかそれ?」
「いや、なんでもないです。それより加藤木先生、小手毬のリハビリテーションは」
「しばらくお休み、かな」

 整形外科病棟を通り抜け、リハビリ室の前ですれ違った加藤木に声をかけられ、自由は足止めを食らっていた。
 目の前にいる彼女は小手毬のリハビリ担当として陸奥とチームを組んでいる。小手毬の幼馴染である自由のことも知っているのだろう。人懐っこい笑みを浮かべながら彼女は自由に労いの言葉をかける。
 
「キミも大変だよね。応急外来が終わったら次はどこに入るんだっけ。四月からさらに厳しい研修がはじまるってのに落ち着く暇もないでしょうに」
「……まぁ、覚悟してましたから」
「ピュアだねえ」

 揶揄するような彼女の声に、自由は顔をひきつらせるが、加藤木は彼の反応を喜ぶように言葉を重ねる。
 
「それにしても……いくら回復期に入ったとはいえ、こうもいろいろあると彼女も落ち着かないでしょうね」
「それは……」
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