闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
「いまはまだ亜桜家が彼女を費用面で支えていてくれるけど、桜庭家に見捨てられた現状を考えると、そろそろ動き出すんじゃないのかい? 本家が」
「は?」

 加藤木の突拍子もない言葉にぽかんとする自由を見て、彼女は自分の失言を悟る。
 
「……いえ、なんでもないわ。ごめんなさいね引き留めて」
「あ、はぁ」

 逃げるように立ち去る加藤木を見送り、自由は首を傾げながら、渡り廊下を歩いていく。
 自由の姿が消えたのを確認した加藤木は、ふぅ、と息をついた後、リハビリ室に入っていく。

 
 ――あぶないあぶない、彼は知らなかったみたいね。
 

 リハビリ室の扉の向こうで胸を撫で下ろせば、そこには先客がいた。

「何を話していた?」
「あら、陸奥先生。患者さんの容態は?」
「傍に看護師の楢篠を置いてる。眠剤を飲ませたからしばらくは寝ているだろう」
「ふぅん。傍にいて、って言われたんじゃないの?」
「なっ」

 図星か、と笑う加藤木に陸奥はムッとした表情で問いかける。

「俺のことはいい。ジユウと何を話したんだ」
「たわいもない世間話ですけど?」
「どーだか」
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