闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
「あ、亜桜小手鞠です。よろしくお願いします」
「亜桜小手鞠を担当している地域医療センター麻酔科、陸奥允だ」
「同じくリハビリテーション担当、加藤木羚子です」

 さらりとした挨拶を経て、白衣を着た三人の大人に囲まれた小手鞠は無表情な清尾を観察する。

 ――セオさん……ハヤザキと同じくらいのおじさまかな。厳しそうな表情してるのは、厄介者のあたしの処遇に困っているのかな。

 小手鞠は茜里病院の名前を知っていた。高校時代の自由の家庭教師だったアカネ――赤根天――の実家だったから。
 転院する、って報告する暇もなかったけど、もしかしたらこっちで顔を合わせることもあるかもしれない。そんなことを考えていたから、医師たちの話を聞き逃していた。

「――となります、よろしいですか」

 清尾に話を振られて小手鞠はきょとんとした表情で頷き、愕然としている陸奥と加藤木を見て首を傾げる。

「あの」
「基本的にこちらの入院棟には認められた担当医と数人の医師、看護師だけが入ることを認められております。尚、亜桜さまの手荷物および装束はすべて回収、しかるべき検査を終え次第、返却される予定です」
「はぁ」
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