闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
「それでは、さっそくですが棟内部へ入る際の基本的な検査に入りたいと思います。陸奥先生、加藤木先生のお二方にもご協力願います」

 郷に入ったら郷に従え、と言わんばかりに清尾は陸奥と加藤木を促し、車椅子から小手鞠を下ろさせる。必然的に陸奥にお姫様抱っこされる形になった小手鞠は、いまになって自分の身に起ころうとしている検査がただならぬものであることを悟り、顔を赤らめる。

「それでは、陸奥先生、亜桜さまを第一診察室へ。加藤木先生は車椅子を入口へ戻した後、第一外来棟にある第二院長室でお待ちください」
「瀬尾先生、検査についてですが」
「立ち会いは担当医ひとりで結構です」

 加藤木が反論する以前にぴしゃりと言い放つ瀬尾に、小手鞠がびくりと震える。それを見て、つまらなそうに瀬尾は呟く。

「第一診察室に入りましたら、機械による案内を開始します。わたしは外で機械操作および外部カメラの調整を行いますのでお気になさらず」
「……了解した」

 ずっと黙ったままの陸奥が押し殺した声で応じれば、清尾はふん、と鼻で嗤う。
 その嘲るような行動を見て、陸奥がぴくりと眉を動かしたが、清尾は無表情のままだ。
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