闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
 加藤木が会釈をして車椅子を運んでいくのを見送り、清尾と陸奥は視線を合わせることなく茜里第二病院と呼ばれる特殊病棟へと足を踏み入れる。

 ――特殊病棟、とは聞いていたけれど……へんなの。

 しん、と静まり返った棟内に清尾と陸奥の足音だけが響く。陸奥に抱き抱えられたままの小手鞠はきょろきょろと視線だけをさ迷わせ、昨日まで入院していた地域医療センターとは異なる特別な病院をおとなしく観察する。
 外装はお城のように見えたが、内装はどこにでもあるようなふつうの病院と変わらない。自動点灯システムなのか、彼が一歩進んだだけで廊下の電灯が一斉につく。
 薄暗かった廊下の向こうが真っ白に染まり、小手鞠は目をまるくする。

「この奥になります」

 一階の最奥に、木製の扉があった。壁掛け式のメタルプレートには【第一診察室】という重々しい文字が刻まれていた。
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