闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
「まあいいわ。陸奥先生ならコデマリを苦しめるようなことはしないだろうから」
「……?」
首を傾げる加藤木に、天が苦笑する。あちこちを嗅ぎまわっているくせに、彼女はときに鈍感な反応を見せる。白か黒かしっかり物事を弁えたい天にとって、加藤木は敵にも味方にもなりうる稀有な存在だ。それゆえに意地悪したくもなる。加藤木や陸奥からすれば、天の生家である赤根のやり方は常識外れで、医療行為から逸脱したものと捉えられてもおかしくない。
だが、それよりも厄介な――諸見里の人間に小手毬を奪われるわけにはいかないのだ。実家と訣別したとはいえ、天はその考えには賛成していた。だから今回、例外的に従弟である雨龍に釘をさすために実家へ戻ったのである。ほかの人間とは極力顔を合わせず、信頼できる元婚約者の彼なら、コデマリを託せるだろうから。
「加藤木先生。本家については調査済みかしら」
「それは赤根本家の? それとも諸見里本家の?」
「どっちもと言いたいところだけど、重要なのは諸見里の方ね」
加藤木はあくまで部外者の人間のはずだ。
「――諸神の菊が、桜庭雪之丞の元で花を散らせたのは事実でしょうか」
「……?」
首を傾げる加藤木に、天が苦笑する。あちこちを嗅ぎまわっているくせに、彼女はときに鈍感な反応を見せる。白か黒かしっかり物事を弁えたい天にとって、加藤木は敵にも味方にもなりうる稀有な存在だ。それゆえに意地悪したくもなる。加藤木や陸奥からすれば、天の生家である赤根のやり方は常識外れで、医療行為から逸脱したものと捉えられてもおかしくない。
だが、それよりも厄介な――諸見里の人間に小手毬を奪われるわけにはいかないのだ。実家と訣別したとはいえ、天はその考えには賛成していた。だから今回、例外的に従弟である雨龍に釘をさすために実家へ戻ったのである。ほかの人間とは極力顔を合わせず、信頼できる元婚約者の彼なら、コデマリを託せるだろうから。
「加藤木先生。本家については調査済みかしら」
「それは赤根本家の? それとも諸見里本家の?」
「どっちもと言いたいところだけど、重要なのは諸見里の方ね」
加藤木はあくまで部外者の人間のはずだ。
「――諸神の菊が、桜庭雪之丞の元で花を散らせたのは事実でしょうか」