闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
「単刀直入すぎない?」
「これでも湾曲しておりますが」

 加藤木が首を傾げながら天の表情をうかがっている。彼女は素直に疑問を口に乗せただけのようだ。それにしたって敵地ど真ん中でその発言をするのは危険だろうに。

「加藤木先生、諸神伝承ってご存じ?」
「ざっくり調べただけです」
「貴女や陸奥先生は知らないと思うけど、この地域古来の神話があってね」
「たしか氏神様ですよね」
「氏神のままでいられれば良かったんだけど……」

 加藤木は天の言葉を遮るように、鋭く告げる。

「その神話を、現代まで引き継いでいるのが、赤根一族なのですね」

 ずずずっ、と音を立てながらお茶を飲んだ天は、哀しそうに微笑む。


「そうよ。莫迦みたいでしょ。この現代においていまもなお神秘のちからを宿そうと必死になってるの。亜桜家は、その“諸神”を顕現するための(かんなぎ)の一族よ」
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