闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う

   * * *


 目に見えない力というものは確実に存在していると、幼い頃から自由は思っていた。その力に抗うことは困難で、定められた運命なのだと諦観していた。産みの母が神社の娘だったから、というのもあるのだろう。なぜ医師の父と結婚したのか、自由を産んでから姿を消したのか、謎を残したまま彼女は死んだという。その後父はすぐに後妻を迎えており、自由は彼女によって育てられた。
 女神を手元においておけば安泰だったのにと本家の祖父が毒づいていたのが気になったが、父に聞いても答えはなかった。自分の母が女神などと称され、その土地の人々から崇められていたことなど、自由は知らなかったのだ。

 幼い頃に死別したといわれる母、諸見里雛菊(ひなぎく)との思い出を自由はほとんど持っていない。
 だが、母の死を伝えに来た親子との出逢いが、自由の未来を変えていくことになる。

「あたし、コデマリ!」
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