闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
 小手毬を異性として意識するようになったのは、彼女が「ジユウお兄ちゃんのお嫁さんになる!」と言ったから。だけど、そのときの自分たちは十歳と十二歳で、結婚がどういうことなのかもよくわかっていなかった。けれど、従兄妹同士なら結婚できると天が教えてくれたから、問題ないと思ったのだ。

 それなのに、高校生になって美しくなった小手毬は自由のことを想ってくれてもあの頃のように求めてくれなくなっていた。
 自由もまた、医師になる夢のため、小手毬だけに構えなくなっていたのは事実だが、あのときもっと話を聞いて、彼女の苦しみを和らげることができていたのなら、結果は違ったのかもしれない。死にたがりのお姫様、などと呼ばれることもきっとなかったはずだ。

 ――小手毬のほんとうの父親は、桜庭雪之丞。彼は、巫である亜桜家に、来る日のために彼女を預けていた。

 桜庭財閥と呼ばれる新興財閥が台頭するのと同時期、世間はスピリチュアルブームに沸く。
 多くの経営者や権力者、大物政治家や上場会社の役員など……そのなかに桜庭雪之丞の名も含まれていた。
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