闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
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小手毬が転院してからの自由は早咲の元で脳神経外科の指導を受けていた。仕事で忙しい早咲と、彼の子を妊娠中の優璃は入籍だけ済ませている。結婚式を行うのかと自由が問えば「そのつもりはありません」とあっさり返された。結婚資金を貯めていた優璃が小手毬のために償ったことを知っているだけに、自由はそれ以上何も言えなくなる。
「そういう君は、亜桜さんとなにか約束でもされていたのですか」
「……約束、ですかね」
小手毬は自由のお嫁さんになりたいと幼い頃に言ってくれたが、いまもそう思っていてくれるだろうか。
事故によって記憶が混濁していた彼女は、治療の結果、十六歳の夏に戻ってきた。身体はもうすぐ十九歳の誕生日を迎えようとしているけれど。
「早咲先生は」
「患者のプライバシーに関わることは言いませんよ」
「でも、知ってらした。桜庭雪之丞――小手毬のほんとうの父親のことを」
MRIの画像を確認しながら、自由は反芻する。
ユキノジョーのおじさん、と小手毬は言っていたが、彼は彼女の父親だ。