闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
 諸見里本家とは土地を巡って衝突しあっていた桜庭一族は、この土地から生まれた怪物だと祖父がこぼしていた。
 なかでも雪之丞は、赤根の四季から零れ落ちた冬の異端者だ。
 彼はこの土地で細々と伝承されていた“諸神”に目をつけ、巫である亜桜家に接触した。
 信仰を金儲けの道具にした雪之丞は、はじめのうち渋っていた亜桜家を金によって懐柔していく。
 かつては諸見里の人間に不思議なちからを与え、栄華に導いていたという亜桜家は、いつしか赤根家の四季に囲われていた。

「そもそも“諸神(もろかみ)”は、土着神でもなんでもない、八百万のどこにでもいる神様のこととして受け継がれています。けれど、“諸見里”がかかわる“諸神(もろがみ)”はそれとは別の、特殊な存在なんです」
「ほう」
「亜桜家はその、氏神のような“諸神”を顕現させることができる巫の一族として、界隈では知られています」
< 172 / 255 >

この作品をシェア

pagetop