闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
「ウリュウ、先生が教えてくれたの。とんぼの生殖行為について。とんぼは一匹のメスをたくさんのオスが追いかけまわして、そのうちの一匹がメスに子種を注いでも、ほかのオスがメスを奪ったらすべて掻き出されて、新たな子種を注いでいくんだって……どのオスも必死になってメスのなかに子種を残そうとする、子孫を残す、そのために」
赤根雨龍という男が、小手毬の専属医として新たに加わった。
下手すると陸奥よりも若く見える青年だが、この病院の後継ぎだということもあり、病院内外の情報にも詳しい。加藤木はそこで、一族から飛び出し雨龍との結婚を拒んだという楢篠天のことや、赤根一族と諸見里本家の確執を知ることになった。
旧くから伝わる“諸神”の真実も。
――飄々としていて油断ならない不思議な男だったわ。楢篠先生が男だったらきっとこんな感じ……そりゃそうか、ふたりは従姉弟だって言ってたし。
「あの食えない先生ね。可愛いコデマリにしょーもないことばっかり教えやがって……」
「だけど、わたしの身体が元に戻ったら、とんぼのメスになるのは本当のこと、だから」