闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う

   * * *


 自由の熱い楔を突き立てられ、小手毬は意識を飛ばす。自由に抱かれた小手毬は「死んでもいい」と嬉しそうに彼を受け入れた。
 けれど、ここで死なせるわけにもいかない。死なれたら計画は頓挫する。
 自由が本当に殺したかったのは瀬尾だけだ。彼だけは許せなかった。“諸神信仰”に乗じて無垢な小手毬にあれこれいかがわしいことを教え込んだ変態だけは。

「――警察に突き出しますか」
「諸見里本家には警察官僚がいるだろ。通報したところで医療事故だと誤魔化されて終了だ」
「よくおわかりで。お久しぶりですね、陸奥先生」

 シーツにくるまれすやすやと安らかな寝息を立てている小手毬を一瞥し、陸奥は自由の手に握られた注射針を見てため息をつく。

「それで俺も殺すつもりか」
「まさか。小手毬が悲しみます」
「……ずいぶん物騒な物を持っているな」
「母が餞別に持たせてくれました」

 敷布には少量の鮮血が散っていた。
 小手毬をオンナにした、証だろう。
 陸奥は目の前の男がほんとうにあの自由なのかと瞠目する。
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