闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
 小手毬の遺体は即座に運ばれ、自由が匿われているという亜桜雛菊のもとへ安置する。亜桜の名字から、狸も訝しがることはないだろうと雨龍はゴーサインを出した。死んだ“器”に興味はない。“諸神信仰”に踊らされていた人間は冷や水を浴びせかけられ、正気に戻るだろう。その先のことは、赤根一族や諸見里本家の人間がどうにかすればいい。ふたたび“器”を作るのか、作ったところでとうてい受け入れられるとは思えないけれど。
 陸奥は加藤木の言葉を思いだし、自由へ伝える。

「異父兄妹でも、結婚する方法はあるんだってな」
「この国では禁忌とされていても、場所が変われば結婚することも、子どもをつくることも可能です」

 そう。海外では異父兄妹などのきょうだい同士の結婚を法律で認めている国が存在している。自由は小手毬の容態を確認次第、ふたりでヨーロッパへ脱出するという。この国ではすでに犯罪者となった自由と、ここにいる限り“諸神信仰”の道具として利用されるであろう小手毬が幸せになるためには、この閉ざされた地方都市から、国から出るしかないのだ。
 もっと早く知りたかったと残念がる自由に、陸奥はぽつりとこぼす。
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