闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
 瀬尾が医療行為の最中にミスをしたことで、大切な“女神”の“器”は意味をなさなくなってしまった。盲信していた彼が自ら死を選ぶのも想定内だと院長は重たい口を開く。一族の繁栄のため、必死になって代々の“女神”の“器”を用意させていた瀬尾の死は、想像以上に痛手だったのだろう。
 雨龍は“諸神信仰”の危うさを院長に説き、女神など必要ないと言い切り、今後は精神科病棟である茜里第二については完全閉鎖し、病院全体の建て替えも視野に入れたいと意見を述べた。完全に弱りきった院長は次期院長になる甥の意見を素直に聞いているという。
 天は加藤木から知らされたことの顛末に、目を白黒させている。狸だと思っていた自分の父親が一気に老け込んだことにも衝撃を受けたようだ。
 それでも加藤木は彼女に言い聞かせるようにつづきを口にする。

「亜桜小手毬は亜桜菊花と名乗る親類の元で密葬され、ちいさな骨になった。骨壷はもう彼女の養親のところに大金とともに届いているんじゃないかしら」
「その、骨は」
「そこらへんで野垂れ死んだホームレスの骨」

 ケロッとした表情で淡々と告げられて、天は何も言えなくなる。
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