闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
 彼がこの場所をつきとめられたのはきっと、蘭子の協力があったからだろう。彼女は雪之丞を愛してはいたが、“諸神信仰”と相容れることはなかった。諸見里の家は蘭子の実家と懇意にしている。そこから情報を得て、死んでいるはずの母が名を変えて生きていることを察したと、自由は正直に告白した。二十年以上顔を会わせていなかった母子だが、蟠りはほとんど残っていなかった。
 自由という名は雛菊がつけた。諸見里の男たちは女神の神託だからと素直に受け入れた。自由になれない息子を置き去りにして、雛菊は雪之丞のもとへ走り、そこで小手毬を産んだ。母を恨んでいるとばかり思っていたのに、自由はからからと笑っていた。なぜなら――

『俺は母さんが産んでくれた小手毬を愛しているんだ。だから恨むなんてことはしない。それに、母さんだって雪之丞(おとうと)のことが諦めきれなかったんだろ?』
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