闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う

   * * *


 陸奥が施した全身麻酔によって仮死状態にされた小手毬は雨龍によって死亡手続きをとられ、他のスタッフに気づかれる前に蘇生措置を開始、茜里第二病院から外へ出された。自由によって亜桜菊花が管理している施設へ運ばれた小手毬は、離れの部屋で眠らされている。
 ピンクのカーテンに猫脚の学習デスク、カントリー調の家具が並べられたこの部屋は、まるで子供部屋のような雰囲気があった。その片隅に、小手毬が眠る医療用ベッドが置かれている。
 静脈から点滴された麻酔の効果は通常三時間ほど。いまはまだ自力呼吸をするのが難しいため、小手毬の顔には酸素吸入器がつけられている。
 自由はこんこんと眠りつづける彼女の横顔を飽きることなく見つめていた。シーツからこぼれるふわふわの髪を撫でながら。

 交通事故から奇跡の生還を遂げたときは、傍にいられなかったけれど。
 今度こそ、彼女が目を覚ましたときに……

「小手毬……俺と一緒に来てくれると言ってくれて、ありがとう」

 自由は瀬尾を殺し、小手毬の処女を奪った。小手毬の死を偽らせた後、誘拐し、悪人になった。
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