闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う

   * * *


「ふぅん。それで、キミはどう思ったんだい?」
「どうにもこうにも。オレはあくまで看護師であって、医者ではないからなんとも」
「医者である私がいいと言ってるんだ。言いなさい」
(ひづる)は強引だなぁ」

 病院内の食堂で、ピンクの白衣を着た女医と、看護師の男性が並んでいる。ふたりの名札には「楢篠」の文字。彼らが夫婦であることは周知の事実だ。
 今日の定食のおかずであるブリの照り焼きに箸をつけながら、楢篠天ははぁと溜め息をつく。
 病院というのは意外と出会いの少ない職場だ。そのため医師と看護師がくっつくのはよくあることだ。とはいえ、女医と男性看護師(ナースマン)がくっついた例は、この地域医療センター内では楢篠健太郎と天夫妻だけだ。

 産婦人科の外来を主にしている天と一日中内科外科病棟で勤務している健太郎は仕事柄顔を合わせることも特にないため、患者を混乱させることも、勘違いさせるようなこともない。ふたりの「楢篠」は、結婚当初は職員に珍しがられていたものの、今ではそれが当然のことと認識されている。
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