闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
 七つ年下の小手毬は、無垢な表情で自由を見つめる。左右非対称の漆黒の双眸に見つめられると、まるで責められているような気分に陥る。
 陸奥は毎日彼女と顔を見合わせているんだと思うと、羨ましいような、悔しいような、そんな気分になる。それは浅ましい嫉妬だと理解しつつ、自由は小手毬の瞳に魅入る都度、自分が陸奥ならいいのにと考えてしまう。

「それに、僕よりずっと偉い先生なんだからな」

 陸奥(まこと)
 研修医として医療センターに配属された自由は、そのときになって彼がどんな人物であるかを知った。
 彼の専門技術はこの国の三本の指に選ばれるほど、群を抜いて素晴らしく、誰もが一目おく。そしてこれも自分が研修医になってから聞いたことだが、早咲と組んで行った手術はたすからないと言われた患者をも救う力があるという。小手毬のことがなければきっと一笑に付していただろうが、彼女が目覚めた今、自由もその真実に近い噂を信じようと思った。自分もいつか、そうなれることを希って……
 だが、それを小手毬に言っても彼女には理解できないだろう。

「ふぅん」
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