闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
 小手毬はその悲痛な叫びを誰にも訴えられず、悶々とした日々を過ごす。目覚めて三日でこれだ。一ヶ月、一年が経過したら、自分はどうなってしまうのだろう。ほんとうにあたしは奇跡の復活を遂げたのだろうか。墓の冷たい土の下から蘇ったキリストみたいに?


 奇跡。
 この三日間で何度言われた言葉だろう。
 そもそもキセキって何だろう。
 小手毬は身近にいるひとに聞きたかった。だけど患者が元気になることを信じて働く陸奥や自由に聞いてはいけないような気がした。だから誰にも聞けなかった。
 医師ではない彼なら、義務からではなく、自分の考えていることを正直に教えてくれるんじゃないか。思わず口にしていた。
 ただ、口にしようとしても、心の中で考えていた難しい言葉は変換できない。言葉に詰まりながら、小手毬は楢篠に問いかける。


「奇跡?」
「そう、きせき」
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