闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
言葉を話すことは苦痛ではない。目覚めたばかりの頃は、口を開けるのが重たく感じたが、もともとお喋りだったのだろう、医師や看護師たちと意思疎通を試みるうちに、自然と滑らかな発声ができるようになった。言語訓練士をつけようとした矢先の出来事に、関係者は「奇跡だ」と驚く。自分の言動ひとつひとつが奇跡として数えられていく。なんて滑稽なんだろう。
「信じるも何も、現に今、起こっているじゃありませんか」
楢篠は鼻で笑う。だけど厭味にならない笑い方だと小手毬は思う。
あっさり返されて、小手毬は途方に暮れる。
……現に今、起こっている?
それはどういうことだろう。現在進行形の奇跡なんか、聞いたことがない。
きょとんとした小手毬を、西陽のような微笑で、楢篠が見守っている。
このひとも、あたしを奇跡だと思ってるんだ。
がっかりした。
小手毬は泣いたような笑ったような表情で、やるせない怒りをぶつける。
「あたし、奇跡なんかじゃない」
「信じるも何も、現に今、起こっているじゃありませんか」
楢篠は鼻で笑う。だけど厭味にならない笑い方だと小手毬は思う。
あっさり返されて、小手毬は途方に暮れる。
……現に今、起こっている?
それはどういうことだろう。現在進行形の奇跡なんか、聞いたことがない。
きょとんとした小手毬を、西陽のような微笑で、楢篠が見守っている。
このひとも、あたしを奇跡だと思ってるんだ。
がっかりした。
小手毬は泣いたような笑ったような表情で、やるせない怒りをぶつける。
「あたし、奇跡なんかじゃない」