闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
   * * *


 不思議なものだと自由は思う。
 医師と患者という関係でありながら、常に反発しつづけているふたり。それでいて、互いのことを認め合っているふたり。

「ミチノクは、奇跡じゃないって言ってた」
「そうなのか?」

 僕は奇跡だと思うのにと口にしたら、小手毬は泣きそうな顔になった。奇跡に飽き飽きしているようだ。

「ひとが生きていくのは奇跡でもなんでもない、当然の帰結なんだって。キケツって何?」

 小手毬は事故に遭う以前より、こどもっぽく見えるようになった。まるで退化してしまったようだ。
 けれど、小難しい言葉をどうにかして咀嚼しようと試みる姿や、おしゃべりなところは全然変わらない。

「帰結ってのは……」
「何らかの事態を原因としてそれから結果として生ずる状態、または一定の論理的前提から導き出される結論」
「あ、ミチノク」

 病室に足を踏み入れながら、陸奥は偉そうに呟く。

「もしくは物事が種々の経過の後、おちつくこと」

 いい所を見せようとした自由は、陸奥に先を越されて苦い顔をする。

「要するにおわり、ですね」
「そうだ……ジユウ、また姫君に油売ってたのか」
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