闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
 彼女なしでは生きていけない。生命の灯火がいまにも消えそうな少女を救うため、自由は両親に敷かれた町医者になるというレールから脱線して、過酷な道を選んだ。結局それはただの自己満足に終わり、彼女はベテランの医師たちによって意識を取り戻したのだが……
 自由はこの選択を間違ったとは思わない。

 冷たい秋の風が自由の頬を通り過ぎていく。
 意識を取り戻したばかりの彼女が、元の生活に戻るまでにはまだ、長い時間がかかることだろう。検査の結果次第だが、過酷なリハビリや投薬による治療は今後も必要不可欠だ。

 ――小手鞠を傍で支えられるだけのちからが欲しい。

 たとえそれが、事故で幼くなってしまった彼女であっても。
 いつしか彼女が約束してくれたように、お嫁さんに。


 愛らしい少女の姿を思い浮かべ、自由は微笑を浮かべる。
 そうして、ふっ、と息をついて病棟へと戻っていく。
< 88 / 255 >

この作品をシェア

pagetop