闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
   * * *


 高次脳機能障害(こうじのうきのうしょうがい)、というのだそうだ。
 小手毬は早咲の説明を耳元に留めつつも、ふわぁあと大きなあくびを零してしまう。

「脳内にある血管に障害が起きたり、頭部に外傷を負った際の脳損傷が起因? しているんだっけ」
「そうだよ。あなたの場合、事故で頭を強くぶつけたことが原因になる」
「うん」
「ときにそれは神経・知的機能障害と呼ばれることもあるし、ひとによっては記憶障害・注意障害・遂行機能障害・社会的行動障害なんてものがついてくることもある」
「うー」
「自分自身の障害を認識できないケースも多いけど、小手毬さんの場合は理解はできているみたいですね」
「……そのムズカシイ言葉はわからないけど、自分があたまをぶつけて神経とか記憶とかが飛んでる、みたいなのはわかります」

 早咲の説明を受けた小手毬は、自分の身に何が起きたのか理解してはいるものの、まさか事故から二年ちかくも意識を失っていたとは到底思えないでいたのだ。
 けれど、幼馴染の自由は研修医として医局に詰めている。今日も白衣を着て研修に励んでいる。
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