闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
 花束の中央で主役然として咲いていたオレンジ色のミニバラはスプレーバラと呼ばれているのだという。一本の茎にいくつもの小さな花をつけている姿がなんとも可愛らしく、クリーム色のかすみ草と戯れるように二十ちかい花をつけている。

「それはわかってます……きれいな花を、いつもありがとうございます」
 
 花に罪はないので小手毬はそれ以上何も言えなくなる。
 彼女が小手毬を車ではねた、と聞いても怒りは湧かなかった。自由を庇って飛び出したのは自分だし、すでに両親と和解していることだ。なんせ当事者である自分も目覚めているのだから問題ない。
 自由よりも冷静に、彼女は優璃を赦していた。
 その対応に戸惑ったのは優璃だけではない、早咲や自由も、まさかこうも素直に小手毬が応じるとは思わなかったからだ。
 陸奥だけが、その様子を分かり切ったように見つめていた。奇跡でも何でもない、と小手毬を受け入れてくれたときと同じように。

「その花の品種名、アレグリアって言うのよ。ほんのり紅茶のような香りがするでしょ?」
「うん」
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